用途に応じて適切なPDFをIllustratorから書き出す

この記事は鷹野雅弘によって執筆されました。
公開日:2015年1月23日、更新日:2016年6月 6日

IllustratorからのPDF作成についてまとめました。おさえておきたいポイントは3つです。

  • 適切なプリセットを選ぶこと
  • [別名で保存]でなく、[複製を保存]を使うこと
  • iPhone/iPad用は注意しないと色化けする

このエントリーは『10倍ラクするIllustrator仕事術』(増強改訂版)からの転載です。

IllustratorのPDF作成にDistillerは必要ではなくなりました。

Illustrator 10までのPDF作成では、PostScriptファイルを書き出し、Acrobat Distillerを使ってPDFに変換を行っていました。そのため、古くからのIllustratorユーザーの方には、IllustratorからのPDF変換は面倒という印象を持ったままの方がいるでしょう。

Illustrator CS以降では、[複製を保存]経由でPDF変換を行うことができます。

用途別PDFプリセットの選択

友人のWさんが「Illustratorから書き出すPDFが重い… オプション全部はずしているのに」と困っていました。聞いてみると、[プリセット]が「Illustrator初期設定」のままとのこと。

ここに見えるオプションは、軽さにはほぼ無関係。デフォルトの「Illustrator初期設定」は、いわば“軽くしない”設定なのです。

IllustratorからPDF変換を行うとき、適切なプリセットを選べば、多くの問題は解決します。次の表は、目的ごとに、どのプリセットを選べばよいかのガイドラインです。

目的プリセット備考
Illustrator形式の代わり「Illustrator 初期設定」Illustratorのバージョンがわからない相手先とデータなどをやりとりするとき
印刷入稿用「PDF/X-1a」、
「PDF/X-4」
必要に応じてトンボや裁ち落としを設定すること
メールでのやりとり、
Webでの公開用
「最小ファイルサイズ」ビットマップ画像の画質を下げ、ファイルサイズを下げる
iPadなどでの閲覧「最小ファイルサイズ」
+カスタム設定(後述)
出力カラー設定、画像のサンプリングなどをカスタム設定する

なお、PDFが重くなる主な原因は配置されているビットマップ画像です。ビットマップ画像をそのままにするのか、ダウンサンプルする(=解像度を落とす)のか、等の設定を[圧縮]カテゴリで行います。

各プリセットには、その設定が施されていますので、把握しておかれるとよいでしょう。

PDF変換のワークフロー

IllustratorからPDF変換(書き出し)を行う流れが次のとおりです。

  1. [ファイル]メニューの[複製を保存]をクリックして[複製を保存]ダイアログボックスを開く
  2. [ファイル形式]を「Adobe Illustrator(ai)」から「Adobe PDF(pdf)」に変更する(Illustrator CS5では[フォーマット])
  3. [Adobe PDFを保存]ダイアログボックスが開いたら、[Adobe PDFプリセット]からプリセットを選択するか、[圧縮]、[トンボと裁ち落とし]などのカテゴリから設定を行う
  4. 書き出し先とファイル名を設定して、[PDFを保存]ボタンをクリックする(ファイル名の「のコピー」の文言は削除する)

PDF変換は[複製を保存]で行う

IllustratorからPDF変換を行うとき、[別名で保存]を使うと次のようなトラブルが生じます。

  1. Illustratorで作業を完成し(abc.ai)、[別名で保存]でPDF保存する(abc.pdf)
  2. そのまま修正を加える
  3. 元の abc.ai には変更が反映されていない

対策

PDFプリセット

デフォルトで用意されているプリセットの各設定の詳細は、次の表の通りです。

Illustrator 初期設定Illustratorデータがすべて保持されたPDFを作成します。 このプリセットを使用して作成したPDFでは、Illustratorで再度開いたときにもデータの損失はありません。 Illustratorのバージョンがわからない相手先とデータをやりとりするときに用います。
高品質印刷

デスクトッププリンターや校正デバイスでの高画質印刷に適したPDF を作成します。

雑誌広告送稿用雑誌広告デジタル送稿推進協議会によって策定されたデータ制作ルールに基づいて、雑誌広告送稿用のPDFファイルを作成します。
PDF/X-1a
(2001 および 2003)

印刷に適したPDFを作成します。全フォントを埋め込み(サブセット)、透明部分を統合します。カラーはCMYKと特色が使われます。 デフォルトのままでは、トンボと裁ち落としが指定されていませんので、出力先の印刷条件に応じて適切に設定する必要があります。

PDF/X-4(2008)

透明効果(透明が分割、統合されない)と ICC カラーマネジメントをサポートします。

プレス品質デジタル印刷やイメージセッタまたはCTPへの色分解などを目的とした印刷工程用のPDF ファイルを作成します。
最小ファイルサイズ

Webやインターネットでの表示、または電子メールでの配信に適した PDFファイルを作成します。画像は比較的低い画像解像度にリサンプリングされます。すべてのカラーはsRGBに変換され、フォントは埋め込まれます。

Illustrator 初期設定

Illustratorデータがすべて保持されたPDFを作成します。 このプリセットを使用して作成したPDFでは、Illustratorで再度開いたときにもデータの損失はありません。 Illustratorのバージョンがわからない相手先とデータをやりとりするときに用います。

高品質印刷

デスクトッププリンターや校正デバイスでの高画質印刷に適したPDF を作成します。

雑誌広告送稿用

雑誌広告デジタル送稿推進協議会によって策定されたデータ制作ルールに基づいて、雑誌広告送稿用のPDFファイルを作成します。

PDF/X-1a(2001 および 2003)

印刷に適したPDFを作成します。全フォントを埋め込み(サブセット)、透明部分を統合します。カラーはCMYKと特色が使われます。 デフォルトのままでは、トンボと裁ち落としが指定されていませんので、出力先の印刷条件に応じて適切に設定する必要があります。

PDF/X-4(2008)

透明効果(透明が分割、統合されない)と ICC カラーマネジメントをサポートします。

プレス品質

デジタル印刷やイメージセッタまたはCTPへの色分解などを目的とした印刷工程用のPDF ファイルを作成します。

最小ファイルサイズ

Webやインターネットでの表示、または電子メールでの配信に適した PDFファイルを作成します。画像は比較的低い画像解像度にリサンプリングされます。すべてのカラーはsRGBに変換され、フォントは埋め込まれます。

プリセット準拠する規格互換性一般圧縮
編集機能
を保持
カラーグレー
スケール
白黒
Illustrator初期設定なしPDF 1.5なしなしなし
高品質印刷なしPDF 1.43003001200
雑誌広告送稿用PDF/X-3:2002PDF 1.33503501200
PDF/X-1a:2001PDF/X-1a:2001PDF 1.33003001200
PDF/X-3:2002PDF/X-3:2002PDF 1.33003001200
PDF/X-4:2008PDF/X-4:2008PDF 1.43003001200
プレス品質なしPDF 1.43003001200
最小ファイルサイズなしPDF 1.5100150300
※iPhone/iPadなどなしPDF 1.5300300300
プリセットカラー変換出力先プロファイルPDF/X 出力
インテント
Illustrator初期設定変換しない(N/A)含めないN/A
高品質印刷変換しない(N/A)含めるN/A
雑誌広告送稿用変換しない(N/A)-Japan Color 2001 Coated
PDF/X-1a:2001出力先の設定に変換ドキュメント CMYK(含めない)ドキュメント CMYK
PDF/X-3:2002変換しない(N/A)-ドキュメント CMYK
PDF/X-4:2008変換しない(N/A)含めるドキュメント CMYK
プレス品質出力先の設定に変換ドキュメント CMYK含めないN/A
最小ファイルサイズ出力先の設定に変換sRGB IEC61966-2.1含めるN/A
※iPhone/iPadなど出力先の設定に変換sRGB IEC61966-2.1含めるN/A

Adobe PDFプリセットの読み込み

出力先などからPDFプリセットが提供されているときには、そのファイルを読み込むことができます。

  1. [編集]メニューの[Adobe PDFプリセット]をクリックし、[Adobe PDFプリセット]ダイアログボックスで[読み込み]ボタンをクリックして、PDFプリセットを読み込みます。

iPhone/iPadなどのデバイスでの閲覧

プリントメディア用のIllustratorデータをPDF変換すると、iPhone/iPadなどのデバイスで閲覧したときに、カラーが変化してしまうことがあります。

次のフローで対応します。

  1. [Adobe PDFを保存]ダイアログボックスで[Adobe PDFプリセット]に「最小ファイルサイズ」を選択する。[出力]タブを確認すると、[出力先]が「sRGB IEC61966-2.1」になっている
  2. [圧縮]カテゴリに切り替え、[カラー画像]と[グレースケール画像]の[ダウンサンプル]を「300 ppi」、[画質]を「最高」に変更する

プリセットは、使い和回せるように、保存しておくとよいでしょう。

アートボードとPDF

Illustratorのアートボードは、PDFではページとして扱われます。

  1. Illustratorのアートボードを使って作業する
  2. [複製を保存]ダイアログボックスで[アートボードごとに作成]オプションにチェックが付いていることを確認する([範囲]を指定することもできる)
  3. Acrobatで開くと、アートボードがページとなっていることを確認できる

アートボードの大きさは異なっていてもOKですので、確認のため、クライアントに送るときなどに重宝します。

レイヤー化されたAdobe PDFの作成

Illustratorのレイヤー情報を使って、Acrobat(やInDesign)でレイヤーごとに表示/非表示を切り替えることができます。

  1. Illustratorでレイヤー分けしておく(サブレイヤーは非対応)
  2. [Adobe PDFを保存]ダイアログボックスで[上位レベルのレイヤーからAcrobat レイヤーを作成]にチェックを付けて保存する
  3. AcrobatでPDFを開き、ナビゲーションパネルで[レイヤー]を表示すると、次のように表示される

ご参考

PDFを最適化するには、こちらのエントリーをご覧ください。

『10倍ラクするIllustrator仕事術』(増強改訂版[CS5/CS6/CC/CC 2014対応])

2014年10月に発売。新しいバージョンを使いながらも、古いやり方のまま作業されている中級以上のユーザー向けの書籍。ツールやコマンドなどの基本的な使い方の解説はありません。

2015年3月、8月に増刷。前書(2011年版)と合算すると3万部超のロングセラーとなっています。

改訂版に関する情報

2011年に発売した書籍の改訂版です。

  • 対応バージョンは、CS5/CS5.1/CS6/CC/CC 2014
  • 178ページから78ページ増量の256ページ
  • 金額は180円(だけ)アップの2,380円(税別)

最新版への対応

2016年11月リリースのIllustrator CC 2017への対応版を、2017年2月に発売します。なお、書籍リリース後の追加情報は、サポートページにて公開しています。

全都道府県縦断セミナーツアー

2014年10月に技術評論社から発売された『10倍ラクするIllustrator仕事術』(増強改訂版)のプロモーションのために、全国47都道県にて実施。

47都道府県すべての県での開催が終了しました。ご参加ありがとうございました!

『10倍ラクするIllustrator仕事術』改訂版

『10倍ラクするIllustrator仕事術』(増強改訂版)は、2011年発売の『10倍ラクするIllustrator仕事術』の改訂版。2014年に技術評論社から発売、現在5刷です。2011年版と合わせて35,000部のロングセラーとなっています。

詳しくはサポートサイトにて。

画像:『10倍ラクするIllustrator仕事術』改訂版

『10倍ラクするIllustrator仕事術』全都道府県縦断セミナーツアー、 47都道府県すべての県での開催が終了しました。ご参加ありがとうございました!

画像:『10倍ラクするIllustrator仕事術』改訂版

5つの「く」

画像:『10倍ラクするIllustrator仕事術』改訂版

DTP Transitのコアとなっている制作へ考え方「ムラなく、モレなく、直しに強く、手数を少なく、美しく」を5つの「く」としてまとめてみました。

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