Markdownを起点とするワークフロー

この記事は鷹野雅弘によって執筆されました。
公開日:2016年3月16日、更新日:2016年9月14日

先日公開したこちらの記事(EPUB/Kindleの制作についてのメモ(InDesignから))で、次のように書きました。

InDesignからのEPUB書き出しは、CC 2015でも楽勝とは行きません。相当手をかける必要があります。

それ以上に困ってしまうのが、InDesignが書き出す画像の質。設定は細かくできますが、ちょっと甘いな、というのが実感です。

乱暴な言い方をすると、電子書籍(EPUB、Kindle)のアウトプットを前提とする場合、InDesignを起点とするワークフローは最適とはいえません。

複数のアウトプットが当然の時代

いうまでもなく、InDesignを起点とするワークフローは、プリントを基本とするものであり、電視書籍のサポートは後付け。Web向けのアウトプットは絶望的です。

早い時期に、InDesignのスタイルは、CSSとの互換性を検討すべきでした(ご参考:最近のInDesignは、ようやく背景色を導入)。

画像のファイル形式、解像度

いうまでもなく、Web/電子書籍とプリントメディアでは、画像に必要とされる解像度が異なり、また、それに応じたファイル形式(およびカラーモード)を用意する必要があります。

たとえば、チャートなどの図版の場合、次のように、IllustratorファイルとPNGファイルのように、2つの画像を用意します。

出力 ファイル形式 解像度 カラーモード
プリントメディア AI 制限なし CMYK
Web/電子書籍 PNG 72-144 RGB

MarkdownからInDesignという構想

Markdown

Markdown記法は、プレーンテキストに次のようなルールを設定することで、文章の構造化を実現するものです。基本的なところをざっくり挙げると、

  • 行頭に「#」がついたら「大見出し」
  • 行頭に「##」がついたら「中見出し」
  • 行頭に「##」がついたら「小見出し」
  • 行頭に「*」がついたら「箇条書き」
  • 画像は「![]()」のパーレン内に、画像ファイルのパスを記入
  • リンクは「[]()」のパーレン内にリンク先を記入(ブラケット内にリンクテキスト)

プレーンテキストのままでもよいのですが、レンダリング(見出しは見出しらしく、箇条書きは箇条書きらしく表示)しながら編集したり、PDFやHTMLへのアウトプットができるMarkdownエディターと呼ばれるものが数多く存在しています。

MarkdownからInDesign

こちら(Markdown to InDesign)の記事に詳しいのですが、2010年くらいから、Markdown書類をInDesignに変換するという試みが行われてきました。

  • スクリプトを使って変換し、InDesignにペースト
  • スクリプトを使ってXMLに変換し、InDesignに配置
  • PandocでWordファイルに変換、WordファイルをInDesignに読み込む
  • PandocでIcmlファイル(InCopy形式)に変換、IcmlファイルをInDesignに読み込む

こちらの記事(MarkdownをXMLに変換してInDesignに読み込む - arinoth's memo)では、すでにワークフローに落とし込まれているようですが、ちょっとクラクラします。

MarkdownからInDesign(ICML経由)

私なりに、いくつか試してみましたところ、「PandocでIcmlファイルに変換、IcmlファイルをInDesignに読み込む」が、見出しや箇条書きはもちろん、画像や表も保持され、よさそうです。

なお、見出しや箇条書きなどは段落スタイルとして、太字は文字スタイルとしてInDesignに取り込まれます。

配置時に[読み込みオプション]を利用することができませんので、あらかじめ、InDesignの段落スタイル/文字スタイルの命名ルールを、Pandocが設定するものに揃えていった方がよさそうです。

準備(PandocによるMarkdown書類の変換)

Pandocをダウンロードしてインストールする

変換の手順(PandocによるMarkdown書類の変換)

  1. ターミナルを起動する
  2. pandoc input.md -s -o ~/Desktop/output.icmlのように入力し、returnキーを押す(デスクトップにICML書類が作成される)

  3. InDesignを起動し、[配置]コマンドで作成されたICML書類を配置する

変換したいファイルをターミナルにドラッグ&ドロップすれば、ファイルのパスやファイル名の入力は不要です。

元原稿を支給する「クライアント」という存在

制作フローを考える上で、無視できないのは、クライアント(原稿支給者、および、校正者)の存在です。

クライアントの多くは、Wordでデータ支給されますが、その場合、次のような問題に悩まされます。

  • 見出しや箇条書きリストなどの書式設定(構造化)が甘い

    • WordでもGoogle ドキュメントでも可能だが、面倒でやらなかったり、ミスが生じやすい

  • Word、Excelでは画像が埋め込まれるため、そもそも「画像を添付する」という発想がなく、添付画像のヌケが生じやすい

InDesign制作を行う方が求めるような原稿が支給されることは夢のまた夢ですが、やはり、元原稿の精度が低いほど、手戻りが増えてお互いに不幸です。

手戻りが減ることは、すなわち制作費の圧縮に直結しますので、次のいずれかを検討いただくのがよさそうに思います。

  • 構造化したWordファイル(Google ドキュメント)を制作する
  • Markdownに慣れて、Markdownで原稿を準備する

現実的な落としどころ

「Markdownに慣れて、Markdownで原稿を準備する」は理想ですが、現実的ではありません。Word、Google ドキュメントなど、入力するものがなんであれ、次のような方針で徹底いただくのが落としどころだと考えます。

  • 「大見出し」には行頭に「#」を付ける
  • 「中見出し」には行頭に「##」を付ける
  • 「小見出し」には行頭に「##」を付ける
  • 「箇条書き」には行頭に「・」を付ける
  • 画像を配置する場合には、画像の下に配置した画像ファイル名を本文内に入れておく

なお、Illustratorのアートボードを使って、複数の図版を管理する方法は使わずに、「1図版:1ファイル」がよさそうです。

まとめ:Pandocを使ったMarkdownを起点するワークフロー

総合的に考えると、「PandocでIcmlファイルに変換、IcmlファイルをInDesignに読み込む」を前提に、Markdownを起点すると、Web、電子書籍、プリントメディアのすべてのアウトプットに対応できます。

なお、Pandocは、MarkdownからWord、WordからMarkdownの変換もサポートしています(未検証)。

Markdown時代の校正

これまでは、InDesignである程度の作業が終わったあとに、PDFや出力紙での校正が基本でした。

Markdownを起点とすると、原稿を作成後、次のような校正が可能になります。

  • PDF(ページネーションとしてのレイアウトはされていませんが、テキストだけよりも見通しがよく、画像入り)
  • HTMLとしてWebで確認

追記(2016年7月12日):

リブロワークスさんがいい感じのものを出してきました。

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