Illustrator CS6は久々の"奇数バージョン"、もとい、"鬼門バージョン"か?
かつて、DTP業界には"奇数バージョンのIllustratorは買うな(使うな)"という格言がありました。
ある意味、Illustratorは5.5(CSでなく、1994年発売のIllustrator 5.5)で完成しているといえますが、チャレンジングな改良を行うことでバギーだったりしたことを揶揄したものです。
- Illustrator 7.0(RGBサポート)
- Illustrator 9.0(透明・アピアランスのサポート)
- Illustrator CS(テキストエンジンの刷新)
いうなれば、奇数バージョンで公開ベータテストを行い、次の偶数バージョンで安定、というサイクルを繰り返していたのです。
CS2以降、複数のアートボードという強化ポイントはあったにしろ、ずっと安定してきましたが、Illustrator CS6は、久しぶりの"奇数バージョン"といっても過言でない実装になっています(CS6=16.0なので、正確には偶数バージョンだということは理解しています...)。
Illustrator CS6での"退化"ポイント
UI変更に伴い、おそらく"実装を忘れてしまった"レベルで退化しています...
どれも地味だけど、なくては困るものばかり。実装した人も、チェックした人もIllustratorを日々使っている人でないことが明らかなレベルです。
- [文字]パネル内、command+クリックで値の初期化ができない
- [行送り]のアイコンをダブルクリックしても、文字サイズが同じ値にならない
- [プリント]ダイアログボックスを開いたとき、[部数]がハイライトしない(2回tabキーを押す必要がある)
- インライン入力をオフにできない(Mac版のみ)([テキスト]環境設定の[ラテン文字以外にインライン入力を適用])
- Illustrator CS6で文字入力中にスペースバーで[手のひらツール]に切り替えられない
- [カラー]パネルの[C]や[M]、[線]パネルの[線分]、[間隔]などの項目名をクリックしても、対応する入力ボックスがハイライトしない
- コントロールパネルのライブカラーアイコンにマウスオーバーしても
カラーにならない。また、指さしアイコンにならない(Illustrator CS5.5ツールパネルもマウスオーバーすると、ほんのりカラーが付いていました。グレースケール化は仕様のようです...)
なお、Illustrator CS6では、アーキテクチャ変更によって、これまでのプラグインがほぼ使えませんので、プラグイン頼りで仕事されている方は要注意です(追記:2012年12月「Xtream Path」がCS6対応になりました)。
それでもIllustrator CS6を使う理由
- パターン作成機能
- 画像トレース(ライブトレースの改良版。スピードが速く、精度も高い)
- 線へのグラデーション
- 64ビット化による処理時間の短縮
- Retina対応している(なぜか、Illustratorだけ...?)
その他の細かい修正ポイント
- 合成フォントの作成時/編集時、異なる文字種を同時に選択できる(Finally!!!)
- [文字]パネル内、[垂直比率]と[水平比率]の位置が逆になっている(InDesignに揃えたものと思われます)
- [文字間のカーニングを設定]のアイコンが「A/V」から「V/A」になっている
- 実際、どうなん?Adobe CS6(1)Illustrator CS6の新機能 | アドビ製品購入ならTool Garageへ!
ちなみに、ペンツール、および、ペンツール選択時のマウスポインタが変わっています。
おまけ
お願い
ここに挙げている以外で、ここがおかしい!という点があれば、コメントやTwitterなどで、ぜひお知らせください。
追記(2012年8月4日):
- イラレラボ illustrator-labo - Tips_Adobe IllustratorCS6 不具合報告その1
- 楠藤さんから:[移動]ダイアログボックスでoption+enterでの複製ができない(option+returnは可能)
- あかつき@おばなのDTP稼業録 【IllustratorCS6】パネルのUIと動作
追記(2012年12月12日):
「ドロップシャドウ」、「光彩(外側)」、「ぼかし(ガウス)」の効果を使用していると、バージョンダウンの際に、ビットマップ化されてしまいますのでご注意ください。
Adobe Illustrator CS6 の「ドロップシャドウ」、「光彩(外側)」、「ぼかし(ガウス)」の各効果において仕様変更が行われています。そのため、Illustrator CS6 で作成したアートワークを CS5 以前の形式で保存すると、これらの効果は分割・統合されます。
追記(2013年7月3日):
Illustrator 16.2.1、Illustrator CCでのバグフィックスについて調査してみました。
追記(2014年6月27日):
Illustrator CC 2014にて、[文字]パネル内でのcommand+クリックで値の初期化ができるようになりました。
追記(2014年10月31日):
効果を使ったIllustrator CS6書類をダウングレード保存すると、ビットマップ化してしまう問題への回避方法は、『10倍ラクするIllustrator仕事術』(増強改訂版)の179ページ「CS5以下にバージョンダウンできるドロップシャドウ」にて紹介しています。